どんな胎児でも逆子になる可能性があります。
逆子になるとどんなリスクがあるのでしょうか?また、逆子の場合の出産方法について紹介します。
逆子って一体?
逆子とは頭を上にした胎児の状態のことを言います。
通常、胎児は頭から産道に入り生まれてくるので、
頭を上にした逆子の状態でいるとおしりから産道を通ることになってしまい、
最後には首が引っかかって頭が出なくなるなど自然分娩をするには危険な状態になってしまいます。
ほとんどの胎児は出産までの間に頭を下にした頭位と呼ばれる通常の体位に戻ってくれますが、
稀に逆子のまま出産予定日を迎えることもありますので胎児の向きには注意が必要です。
覚えておきたい逆子の種類
逆子の体位には、お尻を下にした体位と、膝を下にした体位と、足を下にした体位の大きく分けて3種類あり、
その中でまた細かく7種類の体位に分かれています。
まずお尻を下にした体位では、両足が上を向いている状態である単殿位、体育座りのような全複殿位、
同じく体育座りのようですが片足だけ上を向いている状態の不全複殿位の3種類があります。
次に膝を下にした体位では、両膝を曲げて膝を下にしている状態の全膝位と、
片膝を曲げて膝を下にし、もう片方の足は上を向いている状態の不全膝位の2種類があります。
最後に足を下にした体位では、両足を下にして立っているような状態の全足位と、
片足だけ下に伸ばしている不全足位の2種類があります。
逆子になってしまうのはなぜ?
妊娠後期までの間は、子宮に対する胎児のサイズも小さく羊水の中を自由に泳ぎまわる余裕があるので、
上を向いてみたり下を向いてみたり、はたまた横になってみたりと好きな体位をとっています。
ですので、妊娠後期までの間に「逆子ですね」と言われる妊婦は多くありません。
妊娠後期を迎えるまでには胎児の頭も重くなり下を向くのが通常ですが、
逆子が治らないときには母体側の原因もしくは胎児側の原因のどちらかがあると言われています。
母体側の原因としてはまず妊婦自身の体格が小柄であるために骨盤が小さいと言った原因が挙げられます。
骨盤が小さいと胎児の頭が骨盤の中に納まることが出来ないので固定されず逆子になってしまいます。
そして胎盤の位置が子宮口に近い前置胎盤や、低い位置にある低地胎盤であると逆子になりやすくなります。
また生まれつき子宮が小さい・双角子宮などの子宮奇形や、
子宮筋腫といった子宮に原因があることも逆子の原因とされています。
次に胎児側の原因として、胎児発育不全や低出生体重児など体の小さい胎児は、
羊水の中で自由に動き回る余裕があるため逆子になる可能性が高くなります。
早産である場合も、体が小さい状態で生まれてくることになるため、
逆子が治らないまま出産になる可能性もあります。
羊水過多である場合、羊水が多いということで胎児のスペースが増えるということになり、
胎児が自由に動き回って逆子になる確率が高くなります。
他にも水頭症など胎児奇形であったり、多胎妊娠であると
胎児のひとりが逆子になっていたりすることがあります。
実際逆子になってしまう本当のメカニズムは解明されていません。
その状態は単に胎児が好きな体位であるというだけかもしれません。
しかし母体側や胎児側の原因に挙げた理由で逆子になっているケースが多いのは事実です。
逆子になりやすい時期
妊娠28週頃までは胎児もまだ小さく子宮の中で手足を伸ばす余裕があり、
自由に動き回っているので逆子になっていることがあります。
成長と共に頭が重くなるため出産に向けて自然と頭を下にした頭位になっていきますが、
妊娠32週を超えると胎児の身長も40cmを超え動き回る余裕がなくなり、
正しい位置へと戻ることが難しくなってしまいます。
稀に臨月を過ぎたころに頭位に戻ったりすることもありますが、
ほとんどの胎児は逆子のまま出産を迎えることになります。
逆子になりやすい時期というのは逆子を治すことができる時期とも言えます。
まだ胎児や子宮に余裕があるうちに逆子を治す工夫が必要になります。
考えなければならない逆子の危険性
逆子になっているからと言って胎児自体の発育に問題を与えることはありません。
逆子の危険はすべて出産時に影響してきます。
通常頭から生まれてくるのであれば体の一部が産道に引っかかることはないのですが、
逆子の場合足やお尻から生まれてくることになるため、産道に足や腕が引っかかり出産に時間がかかることになります。
破水をし出産が始まると胎児は肺呼吸へと呼吸方法を切り替えるので、
頭が子宮内に残った状態というのは酸欠状態であることと同じです。
出産に時間がかかると呼吸ができない状態が長く続くことになるので、
新生児仮死や後遺症を引き起こすリスクが高まります。
また胎児が子宮口を蹴って破水した際にへその緒も蹴ってしまい、
産道からへその緒が出てしまう臍帯脱出の危険もあります。
臍帯脱出してしまうと胎児に酸素や栄養を届けることができなくなるため大変危険な状態になり、
妊娠の継続ができなくなって即座に帝王切開による出産が行われることになります。
逆子の場合の出産方法
最もリスクの低い単殿位であれば自然分娩を行っている医療機関もあります。
しかしほとんどの医療機関では逆子であると診断された場合、帝王切開での出産方法に切り替えています。
胎児が無事に生まれる確率よりも、母体と胎児ともに危険である確率のほうが高いためです。
帝王切開は腰椎麻酔を行い、へその下から10~15cm程縦に切開する方法か、
下腹部を横に切開する方法で子宮を切開し赤ちゃんを取り出す手術です。
昔は縦切開で行われることが多かった帝王切開ですが、
今は見た目や子宮にも影響の少ない横切開での手術がほとんどです。
予定帝王切開での出産は通常妊娠37週から38週の間に行われます。
胎児が大きくなりすぎると取り出すことが困難になり、母体の出血も多量になって危険にさらされるためです。
手術を予定することになるので、ほとんどの医療機関ではスケジュールのために、
妊娠32週の時点で逆子であった場合は帝王切開の予定を立てます。
つまり妊娠32週の時点で胎児の誕生日が決まると言うことです。
予定帝王切開であっても、手術の直前までに逆子が治れば自然分娩への変更が可能です。
母体のことを思えば帝王切開よりも自然分娩のほうがリスクが少なく、
次の妊娠中のリスクも減らすことができるので、逆子が治れば医療機関も自然分娩を薦めます。
実際手術直前に逆子が治った例がありますので、最後まで逆子が治るよう希望を捨ててはいけません。
ちなみに、1度帝王切開を行ってしまうと次の妊娠・出産も帝王切開になります。
逆子など異常のない妊娠だったとしても、
自然分娩による子宮の負荷により危険が伴うため、母体の安全を優先し帝王切開になります。
胎児を本来の位置に戻す方法は?
妊娠中期まではまだ胎児も自由に動き回ることができるので、
逆子を本来の位置に戻そうとしてもまた逆子に戻ってしまう場合があります。
ですので、逆子を戻す方法をとるのは胎児が大きくなってきた妊娠28週以降がおすすめです。
医療機関によっては逆子を治す方法として逆子体操を教えてくれることがあります。
逆子体操にもいろいろありますが代表的な体操として、
まず四つんばいになりお尻を高く上げたまま腕を伸ばして体を伸ばし胸を床につけた状態にします。
少し苦しい体勢かもしれませんが胎児が回りやすくなります。
うつ伏せが苦しいという方は仰向けになり膝を立て、お尻の下に枕やクッションを入れて高さを調節します。
どちらもお尻を高くする方法ですが、
この体操をすることによって胎児のお尻や足を骨盤から離れさせて回転しやすくなり、
結果的に逆子を治すことができます。
1日10分~15分程度を寝る前に1回でOKです。
しかしお腹が張ってきたら無理はしないようにしてください。
また、胎児の向きに合わせて左右どちらかを下にして横になる指導もあります。
これはエコーで胎児の向きを確認する必要があるので、医師からのアドバイスを受ける必要があります。
また、医師や助産師による外回転術を受けることもできます。
お腹に直接手を当て回転させる方法ですが、
きちんとした管理のもと熟練したスタッフが行わなければ破水や予期せぬ出産に繋がることもあります。
逆子を治す方法の最終手段として用いられるので、
万が一出産に繋がっても大丈夫な妊娠36週頃に行われることが多いです。
外回転術を行っている医療機関は限られていますので、
逆子であると診断された場合に確認してみるとよいでしょう。
そして、医学的な根拠は確立されていませんがお灸やツボ押しによる方法もあります。
逆子を治す効果があるとされるツボを、お灸や指圧によって刺激することによって胎児の回転を促します。
実際にこれで治ったという妊婦も少なくはありません。
逆子に効果があるツボには三陰交と至陰があります。
三陰交は足の内くるぶしの頂点に小指を当て、上に4本目の指の位置にあります。
押してみてちょっと痛い、という場所が三陰交です。
三陰交を刺激すると血行がよくなり体の冷えを解消するので、胎児が回りやすくなるとされています。
血行をよくするという点では逆子ではない妊婦さんにもおすすめのツボです。
至陰は足の小指の外側にあるツボです。
別名、逆子の灸とも呼ばれています。
至陰を刺激すると副腎皮質ホルモンの分泌が促進されて、
胎児の動きが活発化し、逆子が治りやすくなると言われています。
他にも血行促進や妊婦の悩みである腰痛の緩和などの効果があるとされています。
様々な効果があるツボですが、体の奥から作用するため妊娠初期には刺激しないほうがベターです。
ツボ押しをするなら安定期に入った頃から行うことをおすすめします。
また、妊娠中は刺激しないほうがよいツボもありますので、
下手に刺激はせず、鍼灸院や整体院で指導を受けるようにしましょう。
まずは逆子にならないための対策を!
母体側や胎児側の原因によって逆子を回避できない状況もあるかもしれません。
しかし、原因があったとしても対策をとることによって逆子を治すことができます。
逆子になってしまうと不安に感じてしまうかもしれませんが、日々体を冷やさないといった生活習慣での注意であったり、
逆子体操や簡単なツボ押しであれば自分で簡単に行うことができ、逆子対策をとることが可能です。
対策は万全ではありませんので、逆子が治らなくて焦ってしまうこともあるかもしれませんが、
医師や助産師との相談をとりながら自分にできることから始め、気長に取り組むことが必要です。